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第一回 島田さん(2000年11月掲載)
滋賀県立大学 環境科学部環境生態学科 生物社会研究室 4回生

プロフィール
兵庫県宝塚市生まれ。ムツゴロウ王国に行って犬好きになる。
卒業研究で犬の言葉を解読したいと言ったが、見事にボツ。

◆いったい何匹いるんだろうという探求心がきっかけ

――どんな卒業研究をしているのですか?

 大学のある彦根市周辺の、サギ類の個体数の分布と行動生態について研究をしてい ます。

――なんでサギを研究対象にしようと?

 いったい何匹いるのだろう、という探求心をくすぐられて。あと、身近な動物で観 察しやすいというのがありますね。それとNHKの「生き物地球紀行」という番組が好 きだから。ああいうドキュメント番組を作ってみたいなと思います。サギ一匹の行動 をずっと追うとか。

――どんな風に研究をしているのですか?

 朝5時半くらいに起きて川沿いを観察していきます。できるだけサギを驚かせない 様に数をカウントし、水田でも同じように観察します。採餌行動を見るときは一匹を 最低10分追っかけて見てます。面白いことに種類によっても行動が違うんです。この 周辺には6種類のサギがいるのですが、餌場が主に川であるのと水田であるのとで違っ たり、魚を捕まえるときでも、ダイサギは大物にねらいを絞ってゆっくりトライ、コ サギは頻繁についばんで失敗ばかり。観察していて思ったんですけどサギはあんまり 頭がよくないんじゃないかって(笑)。魚を捕まえてるのかと思ったら、枯れ枝を間 違えてくわえてるんですよ。それも何度も。
 コロニー(集団営巣地)の調査もしているのですが、繁殖地の環境変化がサギに与え る影響も見ています。

――鳥の数を数えたり、一匹の行動を追うというのは根気のいる作業だと思うのです が?

 逆に暇そうだなーと思いませんか?僕も始めはギターでも弾きながら観察できると思っ てたんですが、実際すっごいしんどいの(笑)。

◆サギは環境のバロメーター

――研究と環境問題とのつながりはどのように?

 サギの仲間は集団で木に営巣するのですが、その林の面積が開発とかで減って、サ ギがコロニーを作るのに適した環境が少なくなっています。そうすると他の地域のコ ロニーに移動して利用が集中してしまい、その近くの住民は糞とか鳴き声とかで迷惑 することもあります。
 水田を利用するサギ類(チュウサギ・アマサギ)では、餌になるカエルやドジョウ の減少が生存の危機に結びついているのではないでしょうか。利用する餌場も田んぼ から川に変わっているのかもしれません。でもサギはしたたかに生きているので、こ こ数十年は絶滅することはないでしょう。

――トキも昔はサギのようにたくさんいたが、サギが絶滅する心配は?

 サギも場合によってはそうなる可能性もあると思うし、少なくなっているという人 もいますね。特にチュウサギは環境庁のレッドリスト(1998)で準絶滅危惧種に指定 されています。
 サギは食物連鎖の上位に位置することから有害物質の生物濃縮(※注1)がありうる んです。たとえば埼玉県の浦和市にある「野田のサギ山」では昭和40代の始めには 5000羽ほどのサギがいました。奇形のヒナが生まれたり、タマゴが孵らないというこ とがあって調べてみると、かつて農薬として撒かれたPCB(※2)が原因のひとつ でした。そこに細菌の感染などいくつかの要因が重なって、ついには10年後、野田の サギはいなくなってしまった、という報告があります。サギは環境のバロメーターな んですね。観察してそういう変化にいち早く気づくことができればとも思っています。

――研究室の様子は?

 生物社会研究室というのですが、人数が少ないんです。淋しい。僕あわせて3人。 院生の鈴木さんはタイで熱帯林の小哺乳類の調査を、同級生の武本くんは徘徊性の昆 虫、ゴミムシの生態や種組成と植生との関わりの調査をしています。

――先生はどんな人ですか?

 スーパーミラクル昆虫大好き人間(笑)!一見マニアに見えるけど、かっこいい。実 際ギター持たせると、いけてるBGMが流れてきます。そんな先生は、最近はブラジ ル・アマゾンで熱帯雨林の減少や分断化が昆虫に与える影響の調査をしています。

――研究をすることは初めての経験だと思いますが、感想は?

 実は今まで研究はあまり楽しくなかったです。でも最近楽しくなりだしましたね。 この前、初めて調査している川に素潜りしたんです。そしたらたくさんアユやオイカ ワが泳いでいました。今まで文献を読んだり、橋の上から川を眺めていて見えなかっ たことが、川の中に入って、サギの目の高さで見るといろんな発見ができました。た だ川に行ってサギの数を数えていたのが、「この瀬には今日アユが遡上して増えてく るのでは?」とか、いろいろ想像したりするようになりました。サギとその周りとの 関係を少し見られるようになったと思います。
 あとは、継続する難しさですね。やりたいテーマがいくつかあって、途中でテーマ を変えたいと思ったときがあり、あんまりフラフラしているので、先生や先輩に怒ら れました。これと決めたテーマは根気を持って続けることですね。人生の勉強にもな りました。

◆山を手入れして根本的な解決をしたい

――将来の夢は?

 まだ見たことのない動物を見てその生態を知りたい。それには生息地が残ってない と見られない。だから川や湿地を守るため上流の森林を手入れしたいと思うんです。 ダムが無くても大丈夫なような森を作りたい。下流と上流のつながりを考えた仕事を したい。でもなかなか就職先が無い・・・。

――なぜ動物を直接守るのではなく山を守るのですか?

 守るという言い方は好きじゃないんですが、みんながしていないことだから。長良 川の河口堰とかは治水・利水のために作られたけど、そんな小手先のことでなく、上 流の今ある植林地をきちんと手入れすることで根本的な解決を目指したい。ただ木を 植えようとか守ろうと口でいうだけでなく、本当に大変だけど、仕事として林業をや りたい。

――最後に、これから研究をするであろう人たちへのメッセージを。

 僕の場合、同じ学科の人、先生ともっと突っ込んだ話をすればよかったな。みんな の話を聞いて今すべきことが何か、きちんと勉強しときゃよかったって。
 興味のあることは早いうちからどんどんやっといた方がいい。先生からも話を聞い て、後は実践あるのみ。どんどん挑戦して自分に合ったものを見つけてください。(聞き手 伊藤 浩二 )

※注1 生物濃縮・・・環境中の特定の物質が生物の体内に蓄積されて、濃度を増す 現象。その濃縮率は食物連鎖を経て、より上位の種や個体ほど高くなり、数千〜数十 万倍に達することもある。
※注2 PCB・・・化学的に安定で絶縁性にすぐれ、絶縁油・熱媒体・可塑剤など に広く用いたが、毒性および化学的安定性による人体蓄積・廃棄処理難のため、日本 では1972年(昭和47)から製造・使用禁止されている。ポリ塩化ビフェニル。 (大 辞林第2版)

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